年別アーカイブ: 2013年

雑感

もう、9月も終わろうとしています。
熱帯地方のような今年の夏の暑さも忘れてしまいそうなくらい、過ごしやすくなりました。
昼間、若干、暑さを感じますが、充分我慢できる範囲。
今くらいの、こんな気候がずっと続いてほしいものです。

土曜の今、19時、院長は研究発表会へ勉強に出かけています。
一か月に2~3回、産婦人科の研究会や情報交換会のような会に出席し、今の産婦人科の動向を知るとともに、日ごろお世話になっている、日赤や大学、市立病院、他の開業医の先生方にお礼を言う機会にもなります。
参加されている先生の中に、院長も私も恩師として尊敬する、もう、現役を引退されて10数年、80才近くのO先生がおられます。
現役のときは、他の科の先生がO先生の手術の腕を見学に来られていました。
婦人科の手術の腕前は、日本トップクラスのお墨付きでした。
若い頃のO先生は、それはそれは、怖かったです。
「産婦人科で働くのなら、1話したら10まで知れ」
「産婦人科やるなら、昼飯、抜くな」
「仕事でずるいこと考えるなら、詐欺師になれ」
こんな風に、毎日、たくさん怒鳴られました。何度も泣く思いしました。
でも、今、思ったら、今の私の根底を教え込んでくださったように思います。
今でも、年賀状や暑中見舞いを下さり、研究会で院長と顔を合わすと、
「奥さん(私の事)、元気にやっとるか?」と気にかけてくださいます。
本当に怖い先生でしたが、大好きな、尊敬する先生です。
その先生。もう、全く仕事をされていないのに、まだまだ、研究会に出席され、勉強されているのです。
すご過ぎる!
その学んだ知識をどこに活用されるか、考えても浮かびませんが(笑)いくつになっても、現役を退いても、ずっと自分の知識を磨いておられるのです。
一生勉強、そのお手本のような恩師です。
今、院長が出席している研究会でも、院長と顔を合わせているのでしょうか?
一度、クリニックの手術に来ていただきましょうか?

そうそう。
先日、休日のお昼、ダラダラしている私の前に、ホットドッグが置かれました。
院長作のホットドッグ。冷蔵庫にあるもので、作ってくれました。

ホットドッグ無造作のケチャップが、男の料理って感じでしょ。
これまた、何気ない、誰でもできるホットドックですが、人に作ってもらうと、おいしいですよね・・。

2020年

日曜日の朝は2020年のTOKYOオリンピック開催の決定で盛り上がりました。
少し前まで、あまり興味もなく、福島の汚染水問題が世界中で大きく取りあげられているから、無理だろう・・と思っていました。
でも、プレゼンを見る限り、日本人らしくない世界に訴えかけるアピールを前面に出して、東京が勝利。
素人から見ても、すてきなプレゼンで、まったく畑違いの産婦人科であっても、学ぶことは山のようにあったと思います。
たまたま、朝の5時台に、出産があったので、院長も私も発表直前には目が覚めていたので、リアルにその瞬間を見ることができました。

訴えかける・・ということの基本を学びました。
一つのことをみんなでゴールとするチームワーク・・を学びました。
人としての明るさ・・を学びました。
必死さ・・を学びました。
人に訴えるための言葉の選択・・を学びました。
そして、実際、アスリートではないので、オリンピックの中身に期待することより、7年後の自分、7年後の家族、7年後の細田クリニック、などなどを想像してしまうばかり。
今、生まれたベビーちゃんは、小学生です。
おむつを替えてあげたベビーちゃんが、そこまで成長するのです。
もちろん、院長もスタッフも私も、みんな、7才年をとっているのです。
いろんなことが、変化しているはずです。想像もできない出来事も体験しているはずです。
好いこともたくさんあるだろうし、もちろん、つらいこと、悲しいこともあるだろう7年間でしょう。
試合そのものは、国内なので、もちろん時差がなく、仕事中であり、リアルタイムで観戦できないのがやや残念ですが、いろんなことをひっくるめて、この7年間の体験を楽しみにしたいものです。

このプレゼンで猪瀬東京都知事ががんばっておられました。
報道もされていますが、東京開催決定の9月7日は、猪瀬知事の亡くなられた奥様の四十九日だったようです。
奥様が亡くなられて四十九日しか経っていない中、日本にオリンピックを誘致するために全力を注ぐパワー。
その底知れぬ力と笑顔に感動しました。
知事という立場や政治のことはよくわかりませんが、自分自身を厳しく激しく奮い立たせたであろう行動に敬意を感じました。
自分の職務を全うする姿、マネこそできないでしょうが、社会人として一人の責任ある大人として理想であると思います。

たくさんの刺激があった2020年オリンピック開催決定。
先に書いたように、いろんなことがある7年間に期待します。
今日も、3月に出産した元スタッフ二人が顔を見せてくれました。細田クリニックで出産してくれているので、生まれた時から知っています。もう、歯も生えていました。重くなっていました。散髪もしたって(笑)。二人ともパパそっくりで。目が合うとニコッと笑ってくれます。二人を交合に抱っこ。
こんな時間が、大きな疲れを癒してくれます。
こうして、これから先も7年過ぎていくのかなあ・・と思いました。
eri.hosoda

帝王切開

先日、バスに乗った時の事。
ギュウギュウの人ごみの中、私のちょうど後ろの老婦人二人の会話が耳に入りました。
A婦人  「うちの次男の嫁、恥ずかしいことに、帝王切開したんや。根性ないやろ。もう、がっくりやわ。ま、子どもは元気やったらしいけど・・。」
B婦人  「そんなん、今の人はしゃぁないわ。私らのときは、陣痛来て3日でも4日でもがんばったけどな・・。娘ならがんばれと言えるけど、息子の嫁には言われんしな。」
A婦人  「そうや。まだ、予定日来てないのに、陣痛もない時に、帝王切開の日決めて、この日に生まれます・・って言うんや。あきれるわな。人様に言われへんわ。」

すぐ、真横ではっきりと聞きたくない会話が私の耳に入ってきます。
ちゃうちゃう!帝王切開をダメなことみたいに言わんといて!と、心で叫んでましたが、公衆の前。
グッとこらえました。
陣痛来る前、予定の帝王切開、という内容から、おそらく、理由があって帝王切開になったことは、想像できます。
たとえば、骨盤位(さかご)、前置胎盤(胎盤が子宮の口を防ぐ)、母体に理由があること(合併症があるなど)
などなどです。そこのところ、このA婦人、息子夫婦から聞いてないのか、聞き逃しているのか、聞いてないことにしているのか・・。帝王切開イコールいけないことと、B婦人に話しこんでいるのです。
出産のゴールは、元気な赤ちゃんを産むこと。手段を選ぶことではありません。
必要のない帝王切開は、ありません。理由があって行う手段です。経膣分娩だけが金賞ではありません。
こんな婦人同志の会話の内容、情報が豊富な今の時代ではありえないと思いきや、まだ、間違った解釈をされる方がいらっしゃるのです。ここのお嫁さん、どこの誰かわかりませんが、間違った理解をされて、かわいそうに、気の毒に・・と思ってしまいました。
たった10分ほどのバスの中、いやな思いの時間でした。

妊娠・出産は、一言では言えないほど、いろんなケースがあります。
また、妊娠に至るまで、自然妊娠だけでなく、多くの不妊治療も進んでいます。
妊娠中も、出生前診断が一般新聞の記事やニュースに話題になるくらいです。
それは、妊娠が喜びだけでなく、妊娠中の不安や悲しみも増えることになります。
高齢妊娠も増えました。望んでいない若い妊娠もあります。
いつの時代も、子孫を残す、男女の結婚生活イコール子どもができる、10か月の妊娠そのものの生理的変化や根本は何も変わりないと思いますが、更に深く何かを知る、何かがわかる、という点では、昭和初期とはずいぶん違ってきていると思います。
いろんなことを知ることや、選択肢があることは、良い面もあり・・、難しい面もあり・・、行き過ぎた面もあり・・、助かる面あり。
外来や一つ一つの出産を見ていて生に感じるだけでなく、クリニックを出て、バスに乗って聞こえる会話の中でも間接的に考えてしまう毎日になってきました。
eri.hosoda

また違う、うれしさ

先日、あるお産に立ち会いました。

10数年の友だち、正確には、私より一回り以上年下の後輩が出産しました。
彼女は4人目の出産で、2人目3人目も私が、そして、今回4人目も私の担当で産まれてきてくれました。
何カ月か前、「もし、陣痛始まった時、私がいなかったら、スタッフに任せるね。いい?」と伝えてあり、
本人からも「いいですよ。細田クリニックで2人産んでるから、他のスタッフさんもいい人ばっかりなの、知ってるし。」と言ってもらってました。
そう言われても、姉のような心境で気になって、久しぶりに前日にメールしました。
「変わりない?」と・・・。何だか、予感がしたのです。
返信は「変わりないです。まだみたい。」ということ。予感はずれたか・・と思いきや・・・。
それから、数時間後の明け方、彼女から電話がかかってきました。
「陣痛来たみたい・・。今から、行きますね。」
それから20分後クリニックに着いて、それから1時間半後、陣痛発来から2時間半くらいで、元気な元気な男の子、正式には四男くんが生まれてきてくれました。パパそっくりで、お兄ちゃんたちにも似ていて・・。
お腹にいるときから、男の子とわかっているものの、やっぱり、もう一回おちんちん、確認したりして。
笑顔いっぱい、素敵な、出産光景でした。
パパも仕事前で、しっかり立ち会ってくれました。
3番目のお兄ちゃんは、おばあちゃん家でお留守番でしたが、1番目1年生、2番目保育園のお兄ちゃんは、しっかりと立ち会ってくれました。
ママの落ち着いたお産も感動しましたが、違うスポットが、私の二つめの感動として映りました。
それは、1番目のお兄ちゃん。
ママがまだ余裕ある頃は、弟と二人でパパに絡んだり、椅子に座ったり乗ったり・・。
それが、ママが辛さピークになって来た頃、子どもたちの動きも口数も少なくなってきました。
そして、1番目のお兄ちゃんが・・・。
目には涙をいっぱいためているのです。
でも、必死で耐えている・・。弟の手前か、大人がたくさんいる手前か、がんばって、涙をこらえているのがわかります。
でも、ママの顔を必死で見つめています。
「ママの手、握ってあげてごらん。」と言っても、恥ずかしさともう一人弟が生まれるドキドキな気分で、手がママにまで出ません。前に手を出そうとするけど、その手は止まってしまいます。
やっとの思いでママの手に、自分の右手を添えるけど、ママの辛さが余計に伝わってくるのか、すぐに自分の背中に戻してしまう右手。
左手はパパの手を、右手は時々溢れそうになる涙を拭きとり、しかも、誰にもわからないように・・。
そんな、けなげなお兄ちゃんを私は、しっかり見ていました。
ママはもちろん、パパも子どもたちの様子を観察するどころではありません。
まだまだ、子ども、と思っていても、しっかり、お兄ちゃんになっていました。
いい子に育ってました。やさしい長男に育ってました。感受性たっぷりの男の子に育っていました。
パパとママの日常が、しっかり、映し出されていました。
お産で見える家族の色。
こんな身近な友だちで、家族みんな知っているけど、それでも、やはり感動します。

お産は、血や傷や命だけでなく、その後ろにある家族の色も見えてきます。
その家族の色が見えても、直接、医療に影響することではありませんが、少なくとも、心がドキンとする、そんな家族の色が見えると、私を始めスタッフみんな、次もがんばろう、忙しい日もがんばろう、と思えます。
それを改めて感じさせてくれました。
N美ちゃん、心を晴れさせてくれるお産でありがとう。
eri.hosoda

不妊治療

先日、不妊治療助成金の年齢制限を設けよう、という動きが厚労省から報告されました。
産婦人科に携わるものとしては、この報告がどう動くか、注目です。
その内容は、今までは、年齢制限が設けてなかった日本の「不妊治療助成金」ですが、「42才まで」という年齢制限を設けよう、というもの。
そもそも、この不妊治療助成金の制度を開始する時点から、対象年齢は、決めておくべきことでしょう。
国民にこの助成金制度が知れ渡ってから、改めて・・というのは、国民から反発意見が出てきて当然です。

一個人としては、賛否両論・・という、あやふやな・・感じ。
年齢制限の必要性は、もちろん、感じます。
児童手当て(旧・子ども手当)は、日本に住居のある15才以下の子どもに全員に支給され、平等です。
その、児童手当ですら、年齢制限があります。ますます、お金がかかる高校、大学に行くという年齢に差し掛かる、その直前の年齢で児童手当は終わってます。
そこからお金がかかるので児童手当はもっと長く欲しい・・と思っている方も多いと思いますが、国の決まりで15才以下となっている以上仕方ありません。
このことを不妊治療助成金制度に当てはめたら、年齢制限は必要かと思います。
世界の各国でも、ほとんどこの助成金の年齢制限を設けていますから。

反対に、年齢制限を越えたから不妊治療はダメだ、意味がない、というわけではなく、
ご夫婦で相談された結果、妊娠を希望されている、という結論があっても不思議ではありません。

それはそれで、リスクも承知の上、だと思います。
そのリスクとは、年齢が高くなれば、妊娠しにくい、流産しやすい、妊娠できた場合も、胎児側の問題、育児の問題、それ以前に、妊娠という経過を高年齢で背負うことの命の危険性(高年齢に限らず妊娠出産は命がけです)、命に関わる母体の合併症などなど。
承知で行っている不妊治療まで否定されるような報道がなされていることが、問題です。

つまり、助成金制限が治療の制限と捉えてほしくないと思います。
助成金が切れるから、治療をやめるという方は少ないはず。
不妊治療にも、一部は保険適応になっていることもあります。例えば、排卵誘発の内服や超音波検査など。

つまり、この制度のスタート時点から、考慮しておいて欲しかった内容・・。
助成金制度が開始された、約10年前、「年齢制限はないのかな?」「日本の国もお金持ちだな・・これから先、不妊治療される方はドンドン増えるだろうに・・」と、頭をよぎった記憶があります。
まさに、そうなったわけですけどね・・。
しかも、この制度とは別に、特定治療(体外受精や顕微授精など)支援事業というのがあるのですが、これに関しては、婚姻届が出されている夫婦のみが対象となっているのに対し、今回の年齢制限が云々言われているこの制度は、婚姻届が必要ではないのです。この違いも大きな疑問が残ると思います。

おそらく、国から年齢制限はなされる方向ですが、決定されれば、混乱をきたさないように、不妊治療を受けておられる方にお財布だけでなく、気持ちの上で影響があることを考えていかないとなあ・・と思います。
今回、ここに書いた内容は、私の個人の考えであって、
現実は、人によって不妊の助成金はいらない!とか、逆に、年齢制限は必要ない・・!とか、もっと金額アップを・・!とか・・いろんな意見を聞きます。あって当然だと思いますし、どれも正当な根拠があっての意見のはず。
個々の意見を吐き出すのは自由ですが、それでも、国の決まりごとは守っていかなくてはいけないのも現実・・・・。
eri.hosoda