10月1日より、出産育児一時金の医療機関直接支払い制度が開始された。
出産される方にとって、メリットは、出産一時金が38万円から42万円に上がったこと。
それは、これから出産をしようとされる方にとっては喜ばしいことに違いない。
しかし、このシステムの変更に伴い、いくつかの疑問点がある。
まず、このシステムを導入するに当たり、受付の事務作業が大きく変わる。コンピューターの設定や領収書の変更、それだけでなく、電話の問い合わせや妊婦さまへの説明も変えなくてはならない。
それなのに、国からのお達しは3週間ほど前。こんな大切なことを何の説明もなく、文字ばかり羅列された用紙が送られてきただけ。
産婦人科医会に問い合わせすれば、「東京の本部に聞いてください。」「そんなに知りたかったら、大阪の産婦人科医会が説明会をするのでいかれたらどうですか?」とまるで、投げやり。急遽、受付スタッフが大阪まで説明会に参加してくれることになった。
何度も何度も院長と私、受付スタッフ総動員で、カンファレンスを行い、やっと、システムや流れが整って、スタッフの中でシュミレーションが完成された9月30日の出来事、厚労省大臣からの、発表があった。10月1日からのシステムは6ヶ月間猶予をあげます・・あと、6ヶ月は以前のやり方でも構いません。とのお達しがきた。
何っ!!!一生懸命準備して、徹底できるようにシュミレーションして、さあ、明日から・・という時にこのお達し。
腹が立つと言うか、大臣さまの一言で現場がどんなに混乱しているか。
こんな大切なことを、前日に発言するなんて、現場で働く者のことをなんとも思ってないということだ。
もともと、このシステムは今から1年半だけ、という限定付き。その後のことは、そのときに検討します、という内容で開始が決まったわけで、また、何らかの変更が行われる、と予測している。
政党が変わっても、何も変わらない。分娩費用が値上がりして、生む側の方々にはすごくうれしいこと。しかし、新しいシステムは以前のシステムよりかなり複雑であり、そのため、窓口業務は妊婦さんに不安を与えることのないよう、説明や書類の準備に怠れない。
本当に心から、国のトップにたっておられる方に言いたい。
【ぜひ、現場に立ってください】と。
分娩費支給額を42万円にする、という、素晴らしくよいことをされるのに、いいことをするためにも、現場には相当の苦労があると言うことを認識してほしい。
簡単に、「はい。やりなさい。」みたいなやり方はしないでほしい。
産科医療補償制度の導入もそうだった。(妊婦さんみなさんが、入院費以外に3万円の掛け捨て保険に加入しなくてはならない制度。)
やることの意味、やり方の説明も不十分のまま、「お達し」だけを強制しないでほしい。
厚生労働大臣さんも、折角若い方になられた。
だから、1週間くらい、どこかの産婦人科に研修されて、受付の流れだけでなく、昼も夜も働く医師、助産師、看護師を見てほしい。一生懸命生もうとしているお母さんの姿を見てほしい。何も汚されていない純粋な生まれ立ての赤ちゃんを見てほしい。
そうしたら、「はい、42万円に上げたのだから、みなさんうれしいでしょ」みたいな感想で終わらず、他の必要なことも見えてくるはず。
それでもって、初めて、42万円になって本当によかったね~と言えるのではないか。
国会議員でもない私の意見なので、あくまで、一産科に携わるものの参考意見として記しておく。
eri.hosoda