細田クリニックのひとりごと

気付けばもう春。
朝晩はまだ、冷え込むときも多いけれど、昼間はもう、冬でないことを肌で感じる。
3年前に、桜の咲く天神川を歩きながら、入学式に向かったが、先日、その息子も卒業。
本当にあっという間の3年間だった。
3年前は、制服が歩いているような、初々しい姿だったのに、今では、制服も擦り切れて、ズボンも若干ずらして、格好つけたり・・。
髪の毛も立たしてみたり・・。
まだだまだ、子どもであるけれども、それなりに成長したな~という思いで卒業式に参加。卒業生代表の答辞を聞きながら、涙も出てきた。
高校に行ったら、ちゃんと着いていけるか心配だが、よく考えたら3年前の春にも、同じことを思っていたような・・。
こうして、ドンドン母親を抜いていくのであろう。
身長は、とっくに抜かれている。(体重は私より少ないのが悔しいが・・。)
買い物の帰りには、何気なくスーパーの袋は息子が持ってくれる。(滅多に、というより、1年に2~3回?しか、いっしょに買い物なんて着いてこないけれども)
そして、いつか老いていく私たちは、こんな子どもたちを頼りに生きていくのかな、と思う。
この反面、先月、主人の母が亡くなった。
突然・・。
悲しみを感じることを遮るように、たくさんのことをやらなければならなかったこと
(手続きや連絡、決め事など)があったのは、だれも同じであろうが、何を差し置いても、産科医。
本当に申し訳ないけれども、外来だけ、2コマ休診にさせていただき、その他の病棟のこと、手術、お産・・、普通に、笑顔でこなした。スタッフが、120%で私たちを援助してくれたことは、すごく、嬉しかったし、感謝。そんなスタッフがいなかったら、乗り越えられなかった4日間だった、と心から思う。そんなクリニックにいることを、母もきっと喜んでいるはず、と感じ取っていた。本当は、母の口からの言葉で聞きたいが・・。
親が亡くなれば、5日間ほどの喪休がある一般の会社ではない。
お産や帝王切開は待ってもらうわけにはいかない。
告別式の準備を行う合間のお産や帝王切開。
式場に間に合うか・・、という状況での外来。
告別式の最中も、患者様のことはしっかりスタッフとのやり取り・・。
私は、時間に追われる中、偉そうにも、哲学のように、生まれることと亡くなることを考えていた。
生きていくこと、生まれることは、この上なく嬉しいこと。
心から悲しいはずの時間なのに、心から言えた。元気に生まれてきてくれた赤ちゃん、そして、お母さん、お父さんに、「おめでとう」と・・。

この1ヶ月。
成長していく息子を見、そして、往生した母。それが、家族。
本当に、手に取るように、家族の形が見えた。

この1ヶ月。
そして、いつもと同じように、30数組の家族が、新しい命をむかえた。
今、生まれた赤ちゃんにも、その家族がある。
いろんな思いを経験するであろう、家族。
改めて、この2文字に重みを感じている。

                    eri.hosoda