細田クリニックのひとりごと

正しいことを教える

昨日からテレビは、イスラム国による人質事件のニュースばかり。
一人のジャーナリストが殺害されました。
全く政治や宗教を知らない私たちでも、卑劣極まりない行為だと感じます。
同じ人間のやることではないし、なぜ、こういうことが起こるのか、理解に苦しみます。
お金や死刑囚と命(日本人人質)の引換、その思考回路。
犯人も同じ人間であるのに、どこで、そういう思考回路が生まれたのでしょうか?
もし、もし万が一、その犯人?テロリスト集団?の一人が生まれた直後に、日本のどこかの家庭で育てられていたなら、きっと、テロリストなんかになっていなかったはずです。
周りの環境、親の影響、友達の影響は、怖い・・と思い知らされました。

このニュースが騒がれ出した時、ふと、思い出したことがあります。

数か月前、ある患者さんのお子さんがキッズコーナーで遊んでいました。
その時のお子さん(男の子)の言葉を思い出したのです。
私は、診察の順番が来たママに「先に診察室入っていてください。お子さん、お連れしますよ。」とお伝えして、なかなかキッズコーナーから動こうとしないお子さんをなだめて、靴を履かせようとしていたのです。
キッズコーナーは、数人遊んでおられたので、プチ保育園状態。
ままごとセットのくだものをその男の子は握っていて、他のお子さんが「それちょうだい・・」みたいな会話がなされたのです。そのお子さんは、それを渡すのが嫌だったのか、「それちょうだい・・」と言った子にパンチしたのです。
幸い空振りっぽい感じというか、握りこぶしはそのお子さんには届いていないので、ケンカにはなりませんでしたが。
その時一応大人である私は「あ、(笑)、お友達、叩いたらダメだね・・」と言いました。もちろん、よそ様のお子さんですので、ニコニコして、軽くですが。
そのお子さん、すかさずこう言ったのです。
「でもな、アンパンマンもいいもん(正義の味方ってこと)やけどな~、パンチするで~」って。
そうなんです。
みんなちびっこが見ている正義の味方、アンパンマンも、自分の敵とみなした相手には、暴力を振るっているのです。
私は、どう返したらいいのか答えられず、何も言わずに、お子さんと手を握って、診察室に入りました。
そのお子さんは、すごく良い子。このアンパンマンの暴力を引きずっていくとは思えないし、一緒に来られていたママも礼儀正しい方だから、まっすぐに育てられるだろうと思うので、全く不安はなかったのですが。
子供たちは、見ているのです。
テレビの中のアンパンマンのやっていることを。
人気があるアンパンマン、激しい戦闘ものでもないし、それを見せておいたら子どもは静かだし、どこのママも見せておられることでしょう。
その映像の中の正義の味方は、暴力を振るっていたのです。
だから、自分も同じことをする・・、当たり前ですよね。
それでもって、お友達には暴力はいけないよ、とか、人を叩いたり蹴ったりしたらだめよ、と教えていかなくてはいけない矛盾。
アンパンマンは正義の味方だけど、アンパンマンだけはパンチしてもいいのよ・・なんて言うのも説得力ないし。

多くのちびっこたちはこのアンパンマンを見ていると思います。その年代は、アンパンマンの世界も今の世界も区別を知りません。だから、その発想は正常。
でも、ちびっこ達は、アンパンマンとは関係なく日常の中で、暴力はダメだということを親や周りから教えられます。
そして、アンパンマンの暴力は忘れて、あれは、テレビの中の話、漫画の世界と区別できて、大きくなっていくのでしょう。

話を戻すと・・・
イスラム国の犯人は、きっと、正義の味方は、暴力を振るってもいいのだ、正義の味方なら人を殺してもいいのだ、と信じて育ってしまったのでしょう。
正義の味方は、そんなことをしない!ということを知らずに、そのまま、後藤さんに手を挙げてしまった・・・。
なんと、幼稚な!!!
なんと、未熟な!!!
なんと、バカげた!!!
アンパンマンを見て、かっこいいと思っているのと同じやん!!!

4,5才の男の子の一言。
今回の人質殺害事件のニュースを見て、私の中で蘇りました。

アンパンマン、どんどん子供たちのとりこになっていくし、微笑ましいし、全然OKだと思うけど・・。
強烈パンチだけでなく、話し合いで解決?!なんてストーリーも、作ってほしかったな~(笑)
eri.hosoda