先日、バスに乗った時の事。
ギュウギュウの人ごみの中、私のちょうど後ろの老婦人二人の会話が耳に入りました。
A婦人 「うちの次男の嫁、恥ずかしいことに、帝王切開したんや。根性ないやろ。もう、がっくりやわ。ま、子どもは元気やったらしいけど・・。」
B婦人 「そんなん、今の人はしゃぁないわ。私らのときは、陣痛来て3日でも4日でもがんばったけどな・・。娘ならがんばれと言えるけど、息子の嫁には言われんしな。」
A婦人 「そうや。まだ、予定日来てないのに、陣痛もない時に、帝王切開の日決めて、この日に生まれます・・って言うんや。あきれるわな。人様に言われへんわ。」
すぐ、真横ではっきりと聞きたくない会話が私の耳に入ってきます。
ちゃうちゃう!帝王切開をダメなことみたいに言わんといて!と、心で叫んでましたが、公衆の前。
グッとこらえました。
陣痛来る前、予定の帝王切開、という内容から、おそらく、理由があって帝王切開になったことは、想像できます。
たとえば、骨盤位(さかご)、前置胎盤(胎盤が子宮の口を防ぐ)、母体に理由があること(合併症があるなど)
などなどです。そこのところ、このA婦人、息子夫婦から聞いてないのか、聞き逃しているのか、聞いてないことにしているのか・・。帝王切開イコールいけないことと、B婦人に話しこんでいるのです。
出産のゴールは、元気な赤ちゃんを産むこと。手段を選ぶことではありません。
必要のない帝王切開は、ありません。理由があって行う手段です。経膣分娩だけが金賞ではありません。
こんな婦人同志の会話の内容、情報が豊富な今の時代ではありえないと思いきや、まだ、間違った解釈をされる方がいらっしゃるのです。ここのお嫁さん、どこの誰かわかりませんが、間違った理解をされて、かわいそうに、気の毒に・・と思ってしまいました。
たった10分ほどのバスの中、いやな思いの時間でした。
妊娠・出産は、一言では言えないほど、いろんなケースがあります。
また、妊娠に至るまで、自然妊娠だけでなく、多くの不妊治療も進んでいます。
妊娠中も、出生前診断が一般新聞の記事やニュースに話題になるくらいです。
それは、妊娠が喜びだけでなく、妊娠中の不安や悲しみも増えることになります。
高齢妊娠も増えました。望んでいない若い妊娠もあります。
いつの時代も、子孫を残す、男女の結婚生活イコール子どもができる、10か月の妊娠そのものの生理的変化や根本は何も変わりないと思いますが、更に深く何かを知る、何かがわかる、という点では、昭和初期とはずいぶん違ってきていると思います。
いろんなことを知ることや、選択肢があることは、良い面もあり・・、難しい面もあり・・、行き過ぎた面もあり・・、助かる面あり。
外来や一つ一つの出産を見ていて生に感じるだけでなく、クリニックを出て、バスに乗って聞こえる会話の中でも間接的に考えてしまう毎日になってきました。
eri.hosoda