先日、不妊治療助成金の年齢制限を設けよう、という動きが厚労省から報告されました。
産婦人科に携わるものとしては、この報告がどう動くか、注目です。
その内容は、今までは、年齢制限が設けてなかった日本の「不妊治療助成金」ですが、「42才まで」という年齢制限を設けよう、というもの。
そもそも、この不妊治療助成金の制度を開始する時点から、対象年齢は、決めておくべきことでしょう。
国民にこの助成金制度が知れ渡ってから、改めて・・というのは、国民から反発意見が出てきて当然です。
一個人としては、賛否両論・・という、あやふやな・・感じ。
年齢制限の必要性は、もちろん、感じます。
児童手当て(旧・子ども手当)は、日本に住居のある15才以下の子どもに全員に支給され、平等です。
その、児童手当ですら、年齢制限があります。ますます、お金がかかる高校、大学に行くという年齢に差し掛かる、その直前の年齢で児童手当は終わってます。
そこからお金がかかるので児童手当はもっと長く欲しい・・と思っている方も多いと思いますが、国の決まりで15才以下となっている以上仕方ありません。
このことを不妊治療助成金制度に当てはめたら、年齢制限は必要かと思います。
世界の各国でも、ほとんどこの助成金の年齢制限を設けていますから。
反対に、年齢制限を越えたから不妊治療はダメだ、意味がない、というわけではなく、
ご夫婦で相談された結果、妊娠を希望されている、という結論があっても不思議ではありません。
それはそれで、リスクも承知の上、だと思います。
そのリスクとは、年齢が高くなれば、妊娠しにくい、流産しやすい、妊娠できた場合も、胎児側の問題、育児の問題、それ以前に、妊娠という経過を高年齢で背負うことの命の危険性(高年齢に限らず妊娠出産は命がけです)、命に関わる母体の合併症などなど。
承知で行っている不妊治療まで否定されるような報道がなされていることが、問題です。
つまり、助成金制限が治療の制限と捉えてほしくないと思います。
助成金が切れるから、治療をやめるという方は少ないはず。
不妊治療にも、一部は保険適応になっていることもあります。例えば、排卵誘発の内服や超音波検査など。
つまり、この制度のスタート時点から、考慮しておいて欲しかった内容・・。
助成金制度が開始された、約10年前、「年齢制限はないのかな?」「日本の国もお金持ちだな・・これから先、不妊治療される方はドンドン増えるだろうに・・」と、頭をよぎった記憶があります。
まさに、そうなったわけですけどね・・。
しかも、この制度とは別に、特定治療(体外受精や顕微授精など)支援事業というのがあるのですが、これに関しては、婚姻届が出されている夫婦のみが対象となっているのに対し、今回の年齢制限が云々言われているこの制度は、婚姻届が必要ではないのです。この違いも大きな疑問が残ると思います。
おそらく、国から年齢制限はなされる方向ですが、決定されれば、混乱をきたさないように、不妊治療を受けておられる方にお財布だけでなく、気持ちの上で影響があることを考えていかないとなあ・・と思います。
今回、ここに書いた内容は、私の個人の考えであって、
現実は、人によって不妊の助成金はいらない!とか、逆に、年齢制限は必要ない・・!とか、もっと金額アップを・・!とか・・いろんな意見を聞きます。あって当然だと思いますし、どれも正当な根拠があっての意見のはず。
個々の意見を吐き出すのは自由ですが、それでも、国の決まりごとは守っていかなくてはいけないのも現実・・・・。
eri.hosoda