今日の外来終了後、院長が言う。
「聴診器、壊れてしもうた。もう、寿命かな・・」と、外れた部品をはめてみる行為をしている。
でも、修復不可能。修理に出すほどのことでもないし・・。
グレーで、どこの病院でも見かける一番シンプルな形。
いつも、ポケットに入れて、持ち歩いている。
聴診器は、産婦人科に絶対不可欠ではないけれど、なぜか
活躍している聴診器。
私が「いつ買った聴診器?」と聞くと、驚くような答えが返ってきた。
「30年以上使ってる・・。自分で買った。」
「30年!!!????!!!」
びっくりだ。
学生の頃に買った聴診器らしい。
「そろそろ、寿命やし、もう、捨てよ、・・ごくろうさん。」
と独り言をいいながら、クルクルと丸めた聴診器をゴミ箱へ。
誰より、長く、院長のそばにいた聴診器。
ずっと来られている婦人科の方の胸・・、
ターミナルを迎えようとしておられた方の胸・・、
外来の患者さんの胸、手術を受けられる方、受けられた後の方の胸・・、
家族の胸、地域の集団検診の方々の胸・・。
若い人からおばあさん、何万人の胸に当たってきた、この聴診器。
唯一、院長の胸には当たってないのでは?と思うけど。
数分後、ゴミ箱を除いたあるスタッフが
「何で聴診器、捨ててあるの?」と聞くため、事情説明。
すると
「そんなの捨てたらダメ!先生の思いが詰まってそうだし・・。悲しいやん。」
と、拾い上げてくれた。
それもそうだ。
家では、何でも捨ててしまうけど、これは置いておこうか・・。
私も、つくづく感じた。
自ら捨てた院長だけど、スタッフから
「先生、これ置いておいたら?」
と言われて、
「そうか・・。じゃあ、ここに置いておこうか・・。」
と、一度捨てられた聴診器は、再びロッカーのハンガーにぶらりと架けられた。
eri.hosoda