細田クリニックのひとりごと

本当か嘘か・・出まかせか・・

先日外来で、妊婦さんのお母さんから質問があった。
「お腹がでっぱているから、お腹の子どもは、男の子だと思うのです。でも、超音波で女の子と言われたらしいですが・・。この前、妊婦健診でそう言われた、と、帰ってきました・・。」
よく聞かれる質問。お腹の形で性別なんてわからない。
少し前までは、超音波はない。
更にさかのぼること昭和初期なんて、妊婦健診すらなかった時代。
大きなお腹を見ると、がっしりした男の子を想像したのであろうか。
「男のだよ」と言う言葉の正解率は50%。当たったことだけが、言い伝えられているのだろう。
他にも数々ある。
「赤ちゃんの分まで二人分食べなさい」
あまり、言われなくなったが、お母さんのおばあちゃんの時代の常識であったのだろう。想像するに、戦時中、戦後間もない頃は、食べるものもろくになかった。
だから、妊婦さんには、少しでも、腹の足しになるように、大根の重湯汁一杯が一杯半食べられるように、そのような表現をしていたのであろう。
全く、今の時代にそぐわない。食べるもの自体も違うし、消費カロリーも全然違う。
「産後一ヶ月はじっと寝ていなさい」
私たちが子どもの頃は、当たり前。近所のおばちゃんが産後一ヶ月経ってから、腹痛と発熱で入院した、という話を覚えている。母たちは、「あの人は一ヶ月経ってないのに、実家から自宅に帰ってきて、産後じっと寝てないから熱が出たんでしょ」と話していた。なぜか、その光景リアルに覚えている。(余談*私は4歳か5歳くらいだったと思うけれど、新聞の上でまっ裸でスイカを食べながら聞いていたと思います。その後、お尻に新聞が写って近所のおばちゃんたちに笑われたのでよく覚えているのです。)
産後じっと寝ているのも、全く間違い。
だから、出血(悪露)が外に出ず、子宮の中に溜まって、感染を起こし、一ヶ月位で熱が出たのであろう。それでもって、シャワーもしておらず、髪の毛も一ヶ月洗えず、と不潔極まりない身なり。
感染の問題だけでなく、よく、昔の人はその不快に耐えられたな~と思う。
「腹帯を巻いたら、安産に・・」
母親教室でいつも、話すこと。腹帯は全く医学的根拠はないこと。
昔は犬は安産だったことから、あやかっているのであろう。
また、まだ週数が浅い時期に、大きく出ていないお腹では、周りの人々に妊婦さんと思われない、それでは、かわいそう。腹帯を巻いて、妊婦らしくして、周囲の人にわかってもらいましょう、という慣わし。
よく、腹帯の巻き方を教えてください、と外来中に聞かれるが、医学部でも、看護学部でも、助産学部でも、腹帯の巻き方、というものは習っていない。実習もしていない。本当に神社だけの言い伝えだと思う。
でも、神社で腹帯を買ってきてくださった方々が、安産になってほしいという思いは大切にしてほしいし、無碍に「それは意味ないよ」と言うのではなく、周りの人の気持ちをいただく意味で巻いてみることは大切だと思う。
それイコール安産ではない。
他、たくさん。妊婦さんを取り巻く言い伝え、迷信は調べたらたくさんあるだろう。
こんなこと、本当ですか?という内容があれば、教えてほしい。迷信でも単なる言い伝えでも、どこかに、なるほど・・と思う意味はあると思うので・・・。
eri.hosoda