月別アーカイブ: 2005年11月

分娩室

昨日一ヶ月ぶりくらいに建物の中に入った。
驚いた。
あと、家具と医療機器を入れたら完成である。約一ヶ月で別の建物のように変わっていて、以前見た、配線むき出し、コンクリートの壁などはどこにも見えなかった。
初めて玄関から入り、外来、ナースステーション、新生児室、分娩室、各部屋と全部歩いて見せて頂いた。カメラを持って行ったのに撮る事を忘れてしまうほど夢中に見た。


主に分娩室の照明の調節に時間を費やした。
分娩室。
今までは無機質に機械や無影灯(天井から下がっている大きな手術用電気)があるのが、分娩室のイメージであったが、機械に囲まれてタイル張りの部屋で、産んで頂くより、許せる限り工夫をすることによって、視覚的に気分が楽になる分娩室はないものか・・・と。目に入る色や景色でお産が楽になるとか、痛みがましになるという保証ははないが、自然な暖かさ、落ち着きが少しでも感じて頂ければ幸いである、そんな分娩室にしたいと、考えていた。
そのために、照明デザイナーの先生にすべての照明に関してお願いした。
LED。分娩室は絶対使用したかった。それを1番に考えていた。LEDは目にやさしい。蛍光灯には目には感じない程度のちらつきや紫外線があるらしいが、LEDには全くないらしい。よって、疲労のまっただ中にいる産婦様はもちろん、はじめて、この世の光を感じる赤ちゃんにとっては絶対いいと思う。
色。35万種類の色相と明度と彩度を組み合わせ、その人にあった色を選べる。ほんのりとしたグリーン、フワーとした薄いピンクなど、思わず口を開けて天井を眺めてしまった。
きっと、お産をして、あとで振り返ったら、その時何色だったかはおそらく記憶には残らないと思う。でも、それだけ自然であったという事である。何気ない色が何気なく自然に目に入ってきている、それが一番である。
分娩室に入ってこられたら、まず、副交感神経を刺激してリラックスして頂ける色、今までいたお部屋や陣痛室と同じ暖色系の色、そうすれば、自然で、緊張感がなく分娩を迎えられるのではないか。これは、ふっと浮かんだ1つの案である。
それから、LEDは電球切れが20~30年ないそうだ。蛍光灯は家庭でもそうであるがある程度で寿命があり、ある日突然チカチカして切れてしまう。あのチカチカする不愉快がなくなり、何よりも男一人の院長の電球を変えるという仕事が一つ減るわけだ。高所恐怖症の院長にとってはしごを登る必要がなくなった。

ちなみに、その光を放つ分娩室の壁はすべて木調である。

12月3日4日(土・日)の内覧会に自由に来ていただき是非みな様の目で確かめていただきたい。

あと一ヶ月

今日は11月5日。12月5日が開院日だから、あとちょうど一ヶ月。
期待やわくわく感は心の中にあるが、今表現してしまうのは、焦りである。
建築においては、毎日毎日完成に近づいているのがよくわかる。ありがたい。ありがたすぎて、がんばって下さってる方々になんて言ったらいいのかわからない。ありがとうございます、お疲れ様です・・・そんな言葉でしか、表現できないのがくやしい。
建築現場の事務所へ顔を出すと、切迫感のある会話が聞こえる。
「期限は決まってるんだぞ」「言った事はやってくれ」責任者のKさんの声が現場のみなさんに飛んでいる。クリニックのために、労働して下さり、クリニックのためにKさんも声を大にして、檄を飛ばして下さっている。こんなありがたい事、うれしい事はない。他人の夢にここまでして、パワーを注いで下さっているのだ。
設計室のYさん、設計をお願いしてから、九州にいる時間より、京都に滞在して下さってる時間の方が長いでしょう。こんなに遠い地の施主で申し訳なく思う。
それでも、「あと一ヶ月なんです、お願いします」と頭を下げるしかない。お任せするしかない。
私たちは、あと一ヶ月の間に家具を入れ、医療機器を入れ、内部の仕組みや動きを把握し、スタッフの研修を行い、手順を考え、制服を発注し、勤務体制を考え・・・・・。それから、スタッフの種々の保険や税金、給料の手配、内覧会の準備、細かい物品の手配・・・・・。それから、薬や検査の査定や納品、各チラシや看板の手配、駐車場の案内・・・・・。それから、食器の選定、調理器具の選定、パソコンのソフトの入力や練習、税理士の先生や社会労務士の先生との連絡、リネンの確保、洗濯の手配、ゴミや医療廃棄物の手配・・・・・。それから、京都市医務課や保険事務局、医師会や保健所、消防などの審査・・・・・。まだまだある。
あと一ヶ月である。あと一ヶ月でそれらを整えて、初めて患者様をお迎え出来るのだ。患者様に迷惑をかけられない。嫌な思いをしていただきたくない。細田クリニックに来てよかった、っと思ってもらえるようにがんばらねばならない・・・・。こんなに大変で、やる事がたくさんあって、1日24時間では足りない、と感じるくらい焦っている。
なのに、頑張り屋でも理想だけを追う人間でもない私が全然毎日が嫌じゃない。不思議なくらいがんばれてしまう。
それは、細田クリニックにきてよかったと思ってもらいたい、その一心。
その思いの理由、また、1番の願いは、
  お産の思い出が大切なものであって欲しいから
  女性のライフスタイルの中で、更年期も生理も苦痛なく過ごして欲しいから
である。
女である私だから余計に思う・・・・。院長はこの思いを120%共有している。

休息日

11日、スターティングメンバーの顔あわせを行った。11時から約2時間、今後の日程および種々の書類の説明、そして自己紹介。あっという間に時間はたった。偶然であるけれど、すべて「1」ならびのスタートとなった。今日にふさわしいなあ、ちょっと大げさだが感動してしまった。
最初は、歩く足音が聞こえるほど静まりかえっていた会場が、お昼をはさみ後半30分はにぎやかな女の一軍になっていた。スタッフの一人が「こんなかしこまった職員の姿は今日しか見られないかも知れませんね。」っと話してくれた。きっと、そうであろう。これからはこんな緊張したおしとやかなスタッフはみられないかも・・・。みんな初対面とは思えないこの雰囲気がとてもうれしかった。そこに男一人の院長も言葉は少ないが、全く浮くことなく違和感も感じなかった。さすが、産婦人科医!


さて、今日11月3日祝日は、何ヶ月ぶりに仕事の予定がない。
仕事をがんばるには、気分転換が必要、人間を高めるには仕事以外の刺激も必要、と、今日は主人と映画を見に行く予定をたてた。朝から、河原町まで出向き、予約を取りに行ったものの、すでに夕方まで満席。やはり、休日は無理に決まっている。わかっていたが、ちょっとショック。渋々あきらめお昼を食べて、主人の誕生日のプレゼントを見るという名目で大丸へ行き、結局紳士服売り場をすっと通り過ぎただけで、帰りに100円ショップで買い物をして帰宅した。
たった、3時間の気分転換。今日はクリニックの事を忘れていいか・・と決めたにもかかわらず、二人の会話は「この置物受付に置いたらかわいいね」とか、「この食器ならクリニックで使えるね。」とか。それでも、充分楽しかった。
帰宅してから、ふっと、思い出した。開業をする前に主人に言われた言葉がある。
「開業したら、旅行どころか、デパートも無理だよ」と。
でも、私は、その時こう答えたのを思い出した。
「口では、ずっと、『温泉行きたいよ~、連れて行って~』って言い続けるけど、実際はスーパーでいいから付き合ってよ。それで、満足すると思うから」という会話。
現実になった。12月から軌道に乗るまでは、どこにも行けない。でも、以前交わしたその会話通り、たった3時間の外出、しかも100円ショップで雑貨を買っただけで、「あ~楽しかった」と思えるのだ。
だから、明日から、また、クリニックのために、がんばろうって思えるのだろう。
私がこうしてブログを書く間、主人は横で、「これからは昼寝も出来ないなあ、今の内に寝ておかねば・・・」と高いびきで眠っている。