細田クリニックのひとりごと

写真

クリニックの診察室に1枚の写真を何倍かに引き伸ばし、かわいい装飾をつけて飾ってある。
診察に来られた方はよほど緊張して入ってこられない限り目に付くであろう。
それは、院長がまだ、生後10ヶ月ころの写真。
元々は名刺サイズで、白黒で、写真のまわりに白い縁取りがあり・・・・・。
それを聞いただけで、昭和の雰囲気がある。
しかも、生後10ヶ月の院長の髪型は、お母さんが苦労してバリカンで刈っていたらしくキチッとそろっている。
かわいい手で何かおせんべいらしきものを、握り締めている。
「修ちゃん、こっち向いて~」と言われたのか、きょとんと不思議そうな顔でカメラを見ている。
40ン年経って、こんなおじさんになるとは、だれも想像しなかったであろう。


なぜ、この写真をクリニックに飾ったのか・・・。私の発想であるが、何かで表したかった。


院長はクリニックを開院するにあたり、スタッフとは同等に横並び、というのが基本であった。来ていただく患者様に対しても、見てあげる、というより、自分の持っている知識と経験を提供させていただく、というのが、モットーである。
その象徴として、
入院患者様が、「先生ありがとうございます」といわれるたびに、心の中で、「スタッフのみんながいてくれるから」と思うらしい。そして、「僕は何も偉くないのに。生まれたときはあの写真のようにみんないっしょなのになあ・・」という。その表しに、あの写真を引き伸ばした。
それから、初心忘れず、ということ。
初心は、研修医になったときより、医学部に入ったときより、もっとさかのぼり
人としてのスタート地点。初心もない「無」の状態。まぎれもなく、純粋そのものの時代である。
みんな、絶対与えられていた、「無」の状態、純粋な時があったはず。
そんな初心を忘れてはならない。

外来での妊婦さんや婦人科で来られた方の目に少しでも触れ、院長のこの気持ちを思い出してくだされば、飾った甲斐があったかな、と思う。
                                    eri.hosoda